糖尿病で、なぜ目や腎臓が悪くなる?
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肉を焼いたり揚げ物をすると、良い香りがして茶色い色になる。
タマネギをじっくり炒めると茶色になるし、コーヒー豆を焙煎すると茶色くなる。
こういう風に、食品を加熱調理したとき、茶色くなる現象をメイラード反応という。
デミグラスソース(ブラウンソース)の褐色や、黒ビールやチョコレートの色、味噌や醤油の色、トーストやご飯の焦げもメイラード反応でできる。
メイラード反応とは、ブドウ糖や果糖などの還元糖がアミノ酸やタンパク質と反応して茶色くなる反応であるが、これは一通りの反応ではない。
数種類の糖と、20種類あるアミノ酸がランダムに反応を起こすので、非常に様々な物質が発生する複雑な反応だ。
このメイラード反応がなんと、人間の体内でも起こっているという。
というのも人間の血液中には、常に一定のブドウ糖(血糖)が流れていて、これが体内のタンパク質や脂肪と反応するからである。
血糖は血管の上皮細胞や骨にあるコラーゲン・タンパクと反応し、血管を硬くモロくしたり、骨を弱くしたりしていく。
糖尿病になると、膵臓の病気なのになぜか失明したり腎臓が傷むが、これは目や腎臓の毛細血管のタンパク質が変性して機能しなくなってしまうからだ。
この体内で起こるメイラード反応を「(生体内)糖化」と呼び、できあがった様々な物質をAGEs(エイジズ)と呼ぶ。
またこれら糖化やAGEsによる悪影響をまとめて「糖化ストレス」と呼ぶ。
糖化ストレスと、抗糖化ケア
血糖値が高くなることで起こる、様々な悪影響のことを「糖化ストレス」と言う。
糖化ストレスとは、簡単に言うと血糖値(血中ブドウ糖濃度)が高いために、血糖が身体のあちこちで糖化反応を起こして、AGEsを生成したり、細胞や組織をダメにすることだ。
たとえば人間の体内にあるタンパク質の30%は、コラーゲンというタンパク質なのだが、このコラーゲンが糖化されてしまうと、我々の身体は弾力性を失ってしまう。
肌のコラーゲンが糖化されれば、皮膚の張りがなくなりシワになるし、骨のコラーゲンが糖化されれば、骨強度が下がって骨折しやすくなる。
もちろん血管の細胞にもコラーゲンがあるので、血糖値が高いと毛細血管が薄くなって破れやすくなる。
一方、糖化反応によって生まれたAGEsは、細胞の表面のレセプター(受容体)を刺激して、炎症を起こしたり、血栓を作ったりする。
そして血管の内側にアテロームという塊をつくり、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中の原因になる。
眼の網膜細胞にAGEsが溜まれば、白内障や加齢黄斑変性の原因になる。
さらにAGEsの蓄積は、細胞そのものを壊してしまう場合がある。
細胞には、タンパク質の組み立てや分解を行う「小胞体」という場所があるのだが、細胞内にAGEsが溜まると小胞体に悪影響が及ぶ。
これを「小胞体ストレス」というのだが、ひどい場合は細胞が自爆して細胞死が起こってしまう。
たとえば膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる細胞でこの小胞体ストレスが起こると、インスリンを作れなくなって、糖尿病になってしまう。
このような糖化によるストレスを減らすためには、日頃からの糖化対策が必要だという。
なので最近は「抗糖化ケア」なんてことが良く言われるようになった。