死因を国際比較する方法
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日本人の死因を考えるとき、比較対象となるのは他の国の死因だ。
ところが人口の年齢構成(age-structure)が異なると、単純に比較することができない。
人口ピラミッド(population pyramid)が異なる若い人が多い国と、年寄りの多い国を、単純に比較しても参考にならない。
というのも若い人と年寄りとでは死因が違うからだ。
年寄りの死因の上位項目は、ガンや心筋梗塞、脳卒中や肺炎であるが、若い人はこんな病気では死なない。
たとえば日本の20歳から35歳までの死亡原因一位は、自殺と自殺以外の事故である。
40歳以上の死因の一位はガンであり、そのあとに肺炎や心筋梗塞や脳卒中が続く。
だから日本のような人口が減少し始めた高齢化社会と、人口が増加中の若い国を、単純な比率で比較しても意味がない。
そこでOECD統計では、死亡者数と共に、標準化された死亡率(10万人あたり死亡者数)を算出している。
標準化された死亡率とは、年齢毎の人口と死亡数データを集め、それを標準的な年齢構成の10万人の国に当てはめた指数だと思えば良い。
標準化死亡率を見ると、増えている死因が高齢化のせいなのか、それとも別の理由なのかが分かる。
日本のガン死亡者数の推移(男性)
日本の標準化死亡率の推移(ガン・男性)
標準化死亡率という指数を見ると、実際の死亡者数と、指数の乖離がかなり大きくでるが、日本が世界で有数の高齢化国であるからだろう。
胃ガン対策は、果たして進んでいるのかどうか?
死因を国際比較する場合、その国の年齢構成の条件を揃えないと、比較することは難しい。
なので標準化死亡率を計算して、国と国の死亡率を比較する。
理想的な人口構成を持つ国を想定して、その国に年齢別の死亡率を当てはめたら、10万人あたりの死亡者数がどうなるかを統計的に計算してみたと考えれば良い。
そうして実際の死亡者数と、標準化死亡率とを比べてみると、かなり違った形の推移グラフができあがる。
たとえば日本の場合、ガンによる死亡者数は50年前からずっと横ばいである。
横ばいだと言うことは、この50年間の胃ガン対策が、全くと言って効果がなかったのか?というと、そういうわけではない。
出生率が下がって若者が減り、年寄りが増えたために、胃ガンによる死亡者数が横ばいになっているだけだ。
なので50年前の年齢構成に調整して比較してみないと、胃ガン対策がうまくいってるかどうかは分からない。
こういうことが、標準化死亡率のグラフで見るとわかるということだ。
日本のガン死亡者数の推移(女性)
日本の標準化死亡率の推移(ガン・女性)
標準化死亡率のグラフを見ると、胃ガンで死ぬ人の数が減っているので、胃ガン対策は一応成功しているってことかな。
まあ、普通のガンと同じ程度になったと言うべきか。