老人の転倒の原因は色々あるが…
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老人が転倒する原因には、ものすごくたくさんの原因がある。
たとえば、引っかけやすい服装。
袖や裾が長い服を着ていると、何かに服を引っかけて転倒する。
新しく買った履き物や杖も、転倒の原因になるし、入れ歯だって、外している時には踏ん張りそこなって転倒したりする。
膝や股関節の故障、足の裏の水虫や靴擦れ、靴に入った小石や砂、ゴム底の靴も転倒の原因になる。
糖尿病や血圧降下剤などの薬も、低血糖や血圧の変動によってめまいを引き起こし、それが原因で転倒することもある。
他にも視力低下によって、モノがあるのに気がつかずにぶつかったり、段差に気がつかずに転ぶ。
つまり年寄りには、転倒するきっかけが腐るほどあって、これらを全部避けることなんて、まず不可能なのだ。
なので、転倒する切っ掛けをなくすという考えは、あまり有効ではないし、徒労かもしれない。
第一、人間ってけっこう転びやすいもので、子供の頃は転びまくっていたし、学生になっても転んだ。
大人になっても、ハイヒールを履いたお姉さん方は、なんだかんだ転んでいるみたいだから、年を取ってから急に転びやすくなったというわけじゃない。
つまり「年を取ると、うまく転べなくなる」というところが問題で、そこを何とかしないと、問題の解決にはならないのだろう。
年を取ったから転びやすくなったわけではない
人間というのは、意外と簡単なことで、バランスを失って転ぶ。
たとえば合氣系の武術には、相手のバランスを崩す技術が色々あって、「うわ、こんなことでも人間は転ぶのか」などとビックリすることが多い。
一例を挙げると、見えない角度から指先を目の前に突き出されると、人はそれだけで仰け反って体勢を崩す。
また逆に軽く押された手をスッと外されると、それだけで前に転びそうになってしまう。
傍から見ると、一体なぜあれで転ぶのか不思議に見えるが、実際に技を掛けられてみると、まっすぐに立っていられない。
大相撲中継などでも「え、なんであれだけで転ぶの?」なんてシーンがあるが、あれは思わぬところから手足が出てきたために、それを反射的に避けることで体勢を崩したり、崩されたバランスを戻そうとして、かえって崩れてしまうのだ。
つまり人間というのは元々、ちょっとしたことで転ぶのが当たり前で、年を取ったから転びやすくなったわけではないということだ。
ただ若い頃は、転ぶきっかけがあっても、それをうまくいなしたり、身体のどこかで吸収できた。
また身体をねじったり、腕で受け身を取ったりして、頭や骨盤を打つような致命的なダメージを避けることができた。
年を取るにつれて、そういう風な対処法が、うまくできなくなったのが、問題なのだろう。
変な話、真っ平らなところを歩いていても、なぜか引っかかって転ぶことだって良くあるからね。
もちろん、転倒しやすい環境は改善すべきだが、転倒に対応できる身体を作った方が有益だろう。