大腿骨頚部骨折 術後の死亡率が高い骨折
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老人にとって怖いのが転倒。
転倒して頭を打ったり、腰を打ったりすると、命に関わる。
頭を打つと命に関わるのは、誰にでも分かることだが、腰もかなり危険だ。
というのも股関節周辺を骨折した場合、半年後までに死亡する率が高まるという。
また骨折後の死亡を免れても、寝たきりになる確率が非常に高いのだ。
これは「大腿骨頚部骨折」(だいたいこつ・けいぶ・こっせつ)や、「大腿骨転子部骨折」(だいたいこつ・てんしぶ・こせつ)というケガであるが、術後の死亡率が高くなることが知られている。
なぜ大腿骨を骨折すると死につながりやすいのかについては、今のところよく分かっていない。
が、そもそも大腿骨を骨折するような人は、既に全身が相当衰えていて筋肉が薄く、骨折のダメージから回復する力がないってことらしい。
大腿骨の頭部は、太ももや尻などの分厚い筋肉に覆われている部分だから、筋肉がしっかりついておれば、そう簡単には骨折しないはずの部位だしね。
また大腿骨頭部の骨髄は、赤血球の生産拠点であり、ここを骨折すると、赤血球の生産に大きな支障が出るってことかもしれない。
(造血は、肋骨や胸骨、骨盤や脊椎など、体幹部付近で行われる)骨折などのケガをしても、筋肉がしっかりついておれば、筋肉を潰して回復のための材料を調達できるが、筋肉量が少ない場合、食べ物だけで回復するのは、かなり難しいのかもしれない。
筋肉というのは、水分の貯蔵庫でもあるし、タンパク質の貯蔵庫としての役割もあるからね。
筋肉は、まさかの時のための貯金
転倒して大腿骨頸部を骨折すると、術後の死亡率が高くなる。
どれくらい高くなるかは、調査によってかなりバラツキがあるが、有意に高くなること自体は疑いがないようだ。
なので転倒しても大腿骨を骨折しないように、骨折しても死んだり寝たきりにならないように、常日頃から下半身の筋力トレーニングに励み、筋肉をしっかりとまとっておかないといけない。
というのも骨折すると、回復のために膨大な材料が必要だが、筋肉は、回復材料の貯蔵庫でもあるからだ。
タンパク質は筋肉や血管を作るだけではなく、皮膚や骨の骨格もタンパク質(コラーゲン)だし、免疫力の主力である抗体も、免疫グロブリンという巨大タンパク質だ。
この免疫グロブリンは、半減期(濃度が半分になる期間)が数日から1ヶ月弱という非常に寿命が短いタンパク質なので、風邪を引いたりケガをしたりすると急激にタンパク質が消費される。
ウイルスに対する抗体ができあがるまで、およそ4~7日くらいかかるのだが、この間はもう、タンパク質がいくらあっても足りない状態だ。
となると、骨折してから食べるタンパク質の量を増やしたくらいでは、追いつかない。
タンパク質を吸収するのにも限度があるし、消化吸収にもたくさんのエネルギーが必要だから、急に食べたってそんなに都合良くは吸収できない。
つまり筋力トレーニングで筋肉をつけるのは、大ケガ防止に役立つだけでなく、ケガをした後でも有益ってことだ。
筋肉って、本当に重要なんだね。