年を取ると免疫力はなぜ落ちるのか
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年を取ると免疫力が落ちて、風邪から肺炎を引き起こしたり、インフルエンザで死亡したりする。
この免疫力の主力は「補体」や「免疫グロブリン(抗体)」というタンパク質で、タンパク質さえしっかり摂っておれば大丈夫。
…という話を以前書いたが、どうもタンパク質だけでは、ちょっと不足らしい。
タンパク質が免疫力を支えているのは確かなのだが、タンパク質だけでは、免疫応答が鈍るのだ。
免疫システムというのは複雑で、新しい異物に対して、2段階で対応するからだ。
その2段階とは、抗原(病原菌やウイルス)を見つける仕組みと、抗原を退治する「抗体」を作って攻撃する2つの段階だが、年を取ると、抗原を見つける力が衰えるのだという。
そのため、タンパク質不足でなくても免疫力が落ちて、肺炎やインフルエンザで死亡する人が多いと言うことだ。
少し詳しく書くと、我々の体内には、常に一定量のパトロール部隊が巡回している。
それが「補体」というタンパク質と、白血球と呼ばれる細胞だ。
体内に異物(病原菌やウイルス)が侵入すると、その異物が病原菌(バクテリア)であれば、「補体」と呼ばれるタンパク質がとりついて、細胞壁を壊して退治する。
あるいは白血球グループ(好中球・マクロファージ・樹状細胞・NK細胞・好塩基球・好酸球)なども、異物や病原菌にとりついて、無力化する。
これらは自然免疫と言って、侵入者が何であろうと反応する万能免疫システムだ。
しかしこの自然免疫をすり抜けてくる病原体やウイルスがいる。
これを退治するのがT細胞とB細胞という特別な白血球で、まとめて「リンパ球」と呼ばれる。
リンパ球は、特定の抗原(病原体やウイルス)にだけ反応する細胞で、自分の担当の病原体やウイルスが侵入すると反応する。
獲得免疫と免疫応答
異物が体内に侵入したとき、補体や白血球がそれを見つけて退治する。
しかし補体や白血球に見つからないように侵入してくる病原菌やウイルスもいる。
これらに対応するのがT細胞とB細胞で、まとめて「リンパ球」と呼ぶ。
リンパ球は特定の抗原(病原菌やウイルス)にだけ反応する専門家でたとえば細胞が特定のウイルスに感染すると、T細胞(キラータイプ)が細胞ごと破壊して感染が広がるのを防ぐ。
またB細胞は免疫グロブリン(抗体)というタンパク質を生産し、病原体やウイルスに印をつけて、白血球の攻撃目標にする。
自然免疫システムをすり抜ける病原体やウイルスは、補体や白血球に見つからないように偽装しているので、そこに抗体というタンパク質をくっつけて、「こいつは侵入者だ」という目印をつけるわけだ。
ではどうやって病原体やウイルスの侵入を見分けるかというと、感染した細胞の表面に「MHC分子」というペプチド・タンパクが現れるのをT細胞(ヘルパータイプ)が見つけて、「サイトカイン」という物質を使って、他の白血球に伝えるのだ。
このサイトカインに反応したB細胞が増殖して数百万分子もの抗体(免疫グロブリン)を血液中や体液中に放出し、キラーT細胞やマクロファージなどが感染した細胞を攻撃するわけだ。
このときに、T細胞とB細胞の一部はそのまま何十年も残り、次回の侵入に備える。
これが「免疫記憶」と呼ばれるもので、ハシカやオタフク風邪などの病気に一度かかったら二度とかからないのは、免疫記憶によって病原菌に素早く免疫応答するからだ。
これらの免疫応答は、栄養不足(タンパク質不足)で悪くなるが、老化によっても鈍くなることがわかっている。
どうやら「年を取ると、侵入者に気づけなくなる」らしいのだ。